1951年6月23日、与那城勇の祈り

朝鮮戦争は1950年6月から始まっていたが、その1年後、沖縄のクリスチャンの祈りである。
『日本基督教団史資料集第3巻』345頁。

与那城勇氏の世界平和運動促進大会における開会祈祷

平和の祈り

天に在します我らの父ょ、願わくばみ名を崇めさせ給へ。み国を来らせ給へ。み心の天に成る如く地にもなさせ給へ。我らに日用の糧を今日も与へ給へ。我らに罪を犯せる者を我らが赦す如く我らの罪をも赦し給へ。我らをこころみに遭わせず悪より救い出し給へ。国と力と栄とは限りなく汝のものなればなり。アーメン。

　ああ柔和にして慈悲と寛容に満てる、かかる祈を我らに示し給へる平和の主、又、天と地の創り主に在し我らの運命をみ手の中に支配し給ふ唯一なる御主、過る沖縄戦終止の記念すべき日を、我ら志を一つにする者聖堂に集ひ、友に世界平和を祈念し奉る幸なるこの時をおん導き賜ひしことをまことに感謝し奉る。願わくば今より僕らの捧げ奉るつたなき祈に御耳を傾け給ひ、僕らの切なる叫びを聞こし召し給へ。

　かえりみまするに御主よ、我らみ旨を弁へず、御主の掟に叛き、我ら自らの罪の惹き起せる戦火のため、あはれ我らが愛する郷土は殺戮の修羅場と化し、ために我らの父や子、兄や姉、更に母や妻、姉や妹ら幾千の霊を空く戦場に散らしめ、また父祖伝承の文化をも灰燼に帰すの愚を敢えてせり。〝それ罪の払ふ価は死なり〟我ら今にしてこの聖言を知れり。ああ我ら彼の荒れし戦火の野に、いとしき友らの白々と立てる墓標を見るにつけ我らが罪の深さと、戦争の恐しさ今更の如く胸せまり涙しつつ平和への悲願を切にするものなり。

おお主よ、この地上に平和を来らせ給へ。我らを心見に遭せず、悪より救ひ出し給へ。大惨事世界戦争、おおそれは我ら地上全人類の破滅の宣告なり。
　然るに御主よ、御主見そなはし給へる今まだ人類は戦禍をこりず、国と国とは剣を研ぎ、砲を構へ、飛行機、原子爆弾と軍備競争に狂奔しつつつあり。
　主よ、我らを救ひ給へ。我ら自ら滅びんとす。我らは自らを救ふ力を有せず。主よ、我らは無力なり。全能の御主よ御主にはなし能はざるところなし。今全世界の指導者たちの狂へる頭脳を訂正なし給へ。スターリンの飽くなき征服欲を終止せしめ給へ。中共軍の愚な行為を止ましめ給へ。しかしてアメリカの原子爆弾を無用なものとならしめ給へ。
聖霊、おお今火の如くこの場に臨ませ給ひ、我ら一人一人新しくし給へ。
　我ら生まれ更らずばその罪の性のため亡ぶとおそれて、おののきをもつて求めしめ給へ。願わくば御主、我らの心の中に巣喰う傲慢心を今砕き給へ。口に平和を唱へて心に自我愛、不義、憎悪、闘争を好む心中の賊を今焼き尽し給へ。先づ世界平和を唱ふる前に、私自身を平和の人とならしめ、しかして我らの家庭を平和ならしめ、全沖縄の村から村を、町から町を平和ならしめ給へ。我ら自ら平和、愛の人となり得づして世界平和に貢献し得ず、おお主よ今、我らの胸を叩き給へ。頑迷なる我らの心中の賊を聖霊の焔をもて焼き尽し給へ。而して我らをして、平和を祈るにふさはしき者とならしめ給へ。願くば御主よ、なほこひ願ひ奉る。六年前我らの罪の身代りのとして犠牲の祭壇に捧げられましたる幾千の同胞の霊の上に天上のみ国の幸を恵み給へ。その遺族の上に上よりの慰めと御加護を加へ給へ。
　今また朝鮮半島に、戦火にもだゆる民の上にあはれみを加へ給へ。(後略)

一九五一・六・廿三　於　
　　　　　　　　　　世界平和運動促進大会
　　　　　　　　　　〔『ゴスペル』一九五一・八〕



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