ビートたけし (佐高信 評)

佐高信著の『タレント文化人100人斬り』という本がある。現代教養文庫で1998年に出されたものである。その著作の冒頭にビートたけしのことが取り上げられている。だいぶ前の本なので、ビートたけしのところだけ、引用させていただいても、本の売り上げを左右しないだろうから、引用させていただく。また、この本を読んでみようかという気になられる方もあるかもしれない。

　ビートたけし

　かつて、たけしに「タテマエだけの書き屋」と罵倒された田原総一朗が、たけしをこう持ち上げている。
「ビートたけしがガーッと頑張っていると、禁止用語バンバン使ったり、ヒンシュク買うようなことやって……、ああまだ、彼があれだけやっているんだから大丈夫だとか、みんな思っているんじゃないかな。山城新伍とかタモリは、たけしがやられたら、オレたちもちょっと気をつけなきゃいけないとか」
　これにはタケシもソノ気になって、「オレは炭鉱のカナリヤみたいなもんだね」と言っているが、私はたけしを「きつたねえ奴」だと思っても、過激だと思ったことは一度もない。この対談で。たけし自身が「オレは実に汚くてね」と認めている如く、たけしは徹頭徹尾キタナイ奴である。

　たけしは、横山やすしを、吉本の林会長に可愛がられて「過保護」だったと言っている。そのやすしが、たけしの『フライデー』殴り込み事件を聞いた時、発したセリフが「一人で行け、ドアホ!」だった。これはズバリ、たけしの弱点を突いている。

　『ビートたけしのみんなゴミだった』(飛鳥新社)によれば、小学校時代、たけしが友だちと一緒に悪ふざけをして職員室に呼ばれた時、抵抗することもなくチクったという。
「もうオレは全部バラしたね。現場にいなかったやつまで名前出しちゃって、あれ、みんな恨みに思ってるだろうなあ」

　こうした気質はいくつになっても変わらない。『フライデー』に軍団を引き連れて行ったのもそうだし、大塚署の取り調べを受けて恐ろしくなり、日ごろバカにしている警察に頭を下げまくって執行猶予をつけてもらったのもそうである。

　映画監督の山谷哲夫は、たけしの映画『その男、凶暴につき』を大塚署の刑事たちは「ここではぺこぺこしやがって、何が凶暴だ」と嗤うだろう、と書いている。

　たけしは「凶暴」というより、臆病な「凶獣」なのである。いつも目をパチパチさせ、肩を張っているたけしを見ると、私は‘気弱な奴凧(やっこだこ)’だなと思う。一度、落ちたかに見えたヤッコダコは、周囲におだてられた再び舞い上がっている。「子どものため」とかで、逃げたカミさんに頭を下げて戻ってもらった人間がおばさんを攻撃し、中流意識を批判しているのも笑わせるが、「露骨で、下品で、ゲスな」このヤッコダコは「降りる」ことを知らずに舞い上がりつづけるだろう。

たけしを生んだ母親はかつてこう言っていた。
「くれぐれも言っとくけどね、かたぎの娘さんには手を出すんじゃないよ。お前は脱線者なんだから、まじめにやれよ」(1989年10月)


(私のコメント) ここまで書かれてビートたけしは佐高信に何も反論しなかったのだろうか。ここに書かれているとおりだとしたら、安倍晋三批判などできるわけがない、ということになりそうだ。


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